パチンコグッズお宝紹介と株式投資、たまに群馬

令和時代のブログ(Railway:鉄道、Entertainment:娯楽、Investment:株式投資、Word:一言、 Automobile:自動車)

駅のベンチで眠り、起きたら膝枕をされていたあの日

f:id:kingdomfreedom:20191024154833j:plain

令和時代の某地下鉄駅で見かけた座る分には快適な椅子。これで駅ネはできない

深夜に乗り換えたり、駅で寝たりしながら国鉄(現JR)を乗り潰す。まだ「いい旅チャレンジ20,000km」も始まっていない時期にそんな素っ頓狂なことをやっている奴は……少しはいた。確か、私は国鉄完全走破を達成した2桁目(40番目くらいだったか)で、「全国にはおかしな奴がいるもんだなあ」と自分のことは棚に上げて思っていたものだ。

 

まだ義務教育も終わっていない頃から一人旅をしていたこともあり、それなりに怖い体験をしている。警察の職務質問は何回も受けた。待合室に暴力団員風の男たちがたむろしていて一睡もできなかったことがある。運転席の真後ろという前を見るには特等席の位置で飛び込み自殺に遭遇したこともある。夜行列車で歯磨きに行った隙にカメラを盗まれた際は頭にきてそのまま予定を変更して帰宅した。

 

舞台は九州の熊本駅。夏。当時はもちろん九州新幹線など影も形もなく、全国どこでも夜行列車が主役で、夜中に列車が停車する熊本駅なら駅ネができることは予想がついていた。宿泊代を節約するため、いつものように駅で一晩過ごそうと考えた。

 

荷物は大きめのリュックと、カメラなどのすぐに使いたいモノを入れたラグビーボールを一回り以上大きくしたイメージのカバン、計2つだ。陣取るのは、腰の部分が低くなった硬い椅子が5つ連結された長椅子だ。身体を椅子の凹みのどの部分に合わせるかで寝心地が変わる。今でいう旧型客車の直角クロスシートを2人分もしくは4人分占有していかに身体が痛くならないように眠るかは、経験によって様々な方法を編み出すものだが、腰部分凹み型5連結簡易長椅子の場合は、毛布などでも持ち合わせていれば別だが、基本的にはお尻を1つの椅子の低い部分に置いてあとはそれなり。そんな風に横になれば、それで快適だろうが不愉快だろうがどうしようもないのである。抗うな、だ。

腰部凹み型連結長椅子に仰向けになる。身体の左側は椅子の背もたれ部分なので、2つのカバンは眠っている間に盗まれないよう、右側の腰の下あたりに置く。これなら目を開けたらすぐに見える。まあ、気休めだ。

 

目覚めは快適だった。おかしい。こんな凸凹のある椅子で寝ているのに快適なわけがない。そのわけは、目が覚めるにつれて理解できた。眠るときにしていなかった枕をしていたのだ。ん? 

 

目が覚めた。いや醒めた、というか冷めた。この状況はまずい。目を開けると、おじさんらしき人(はっきりは見られなかった)が(多分)微笑んでいた。飛び起きた。というか、身体を起こした。荷物を見る。ある。起きたことで凹み型長椅子の真ん中の椅子に座ることになった。おっさんは膝枕をしていた時点では恐らく一番右端に座っていたはずだが、右から2番目に移動している。つまりカップルみたいに並んで座っている。そして、耳元で囁いた。「行こ」。「行こう」ではなく「行こ」。

寝起きの働かない頭を何とか回転させるべく、状況把握に努める。役人が言う「情報把握に努めております」なんていう悠長なものではない。即時瞬間最速フル回転である。それと同時にジジイが私の手に何かを握らせた。そっと手を裏に回して中身を見ると1000円札! そして、「行こ、ね、ホテル」。確かに奴はそう言った。

 

全てを理解した。自分が取るべき行動もはっきりした。生返事をしつつ、軽く頭の中でシミュレーションしてみる。2つの荷物を瞬時に抱え、即座に走り出し、その途中で周遊券(乗車券)を取り出して改札を抜ける。これだ。

 

クゾジジイがまた言った。「行こ、ね、行こ」。

 

それが合図だった。2つの荷物を掴むと同時に改札口に向かって走り、一切振り返ることもなくホームまで一直線だ。行くのはホテルじゃない! 熊本駅のホームなんだよ!

 

今思えば、どんな人だったのか、もしかしたら悪い人じゃなかったかもしれないし、顔くらい見ておけばよかったと思う。なぜなら、すでに安全な場所にいるからだ。あとからならば何とでも言える。

 

その後も駅ネをやめることはなく、何度か怖いことも経験したが、身の危険を感じたのはこの時くらいである。(令和元年11月2日)