平成31年3月に社会実験期間が終了しても特に何の報せもなく(地元住民などにはあったのかもしれない)、そのままの状態でラウンドアバウトが使われ続けた。車の往来が特に増えるわけでもなく、大きな事故が発生するわけでもなく、左回りをすることを強調する看板が増えた程度で運用され続けた。このラウンドアバウトを見に来るために安中榛名駅の乗降客が増加したという噂も一切聞いていない。
事態が動いたのは(そんな大袈裟なことではない)令和になって少し経った夏のことである。予想通りというか想像通りというか総意か民意か、ラウンドアバウトが恒常化されることが決まったのだ。もう信号はいらない。中央島もしっかり作り直さなければならない。大規模な工事が始まったのである。
令和元年夏に設置された看板を見ると、請負金額は46,750,000円(税込)で、工事期間は翌年3月25日までとある。簡易的な工事で済んだ前回とは異なり、恒久化される今回の工事は道路を掘り起こしたり、信号を取り去ったり、看板を付け替えたり、中央島もしっかり作らなければならない。一時的に大型車の通行止めを実施するなど、それなりの規模で工事が行われることとなった。
工事が始まると時を同じくして「2019年度 本格運用開始! 環状交差点」の幟(のぼり)も誇らしげに数枚掲げられるようになった。
中央の島も作られ始めた。いつの間にか信号にかけられていた覆いはなくなっている。外したのか飛んでいったのか。ずっと使われていないから、誰にも見られなくなった信号。存在感が消えている。
よく見ると、中央島は交差点改良工事とは別の企業による工事のようだ。整備工事の請負金額は9,460,000円(税込)で、工事期間は翌年3月25日までとある。
工事は令和2年になってからも順調に進行し、1月下旬までに信号機が根元から撤去された。
工事中は横断歩道が通行できなくなった。といっても、散歩する人がたまにいるくらいだから、特にこれといった不具合は生じていないはずだ。工事予定期間の3月25日まであと1ヶ月半となり、工事は順調に進んでいる。
ちょっと気になったのは、中央島周囲が盛り上がっていることだ。写真では少しわかりにくいけれど、中央島を囲むように丸く引かれている白線に乗り上げながらラウンドアバウトを通過すると、それなりに車が傾く。乗用車ならそれを避けることができるが、大型観光バスやトレーラーは通過時に確実に白線を踏むことになる。完成の暁にどうなるのか、注目である。
歩道周辺の工事も進んでいる。安中市街のほうから上がってきて安中榛名駅に行く部分の道がどうなるのか、 歩道が拡張されるのか、駅に行く専用道ができるのか。工事状況を見ると、以前は3車線あったところを1車線にしたから、元左車線部分が歩道になりそうな気配だ。でも、こんなに広い歩道が必要なのか。
また、中央島には木が植えられるのか、それとも見通しが悪くなるのを避けるため、低木もしくは植物が植えられる程度なのか、興味は尽きない。
3月20日からの3連休も工事は最終仕上げのため急ピッチで続いている。歩道の点字ブロックや中央島の植栽、そして白線の引き直しである。
3月24日、予定通りラウンドアバウトの工事は終了し、それを知らせる看板などは撤去され、完全運用がスタートした(上毛新聞などの報道による)。真新しい点字ブロックや雑草のない中央島の植栽、引かれたばかりでくっきり白が浮き出て美しい白線……。仮設時よりも見通しが良くなり、工事中のときより走りやすくなった。これなら「ラウンドアバウトにして良かった」と多くの人に思ってもらえるのではないか。
※以下の写真はラウンドアバウト供用後の3月下旬に撮影したものです。
安中榛名駅を経由、もしくは発車した車は必ずここを通る。すぐに群馬県唯一のラウンドアバウトの標識を見ることとなる。この看板を見られるのは安中榛名駅前だけだ。
ここにももちろん、ラウンドアバウトの標識がある。美しく引かれた白線が目を引く。
一番左側が歩道、そして謎の空間、車道。謎が解けたら報告する。
中央島周囲の盛り上がっていた部分は色が変わり、実際に車が走る円周部分が広くなったので、車が斜めになりながら走ることもない。当たり前のことだが、工事途中と完成後では様子は変化するのだ。
群馬県初、そして唯一恒常化されたラウンドアバウト。事故が発生することなく、末永く安全に運用されることを願ってやまない。(令和2年4月4日)
完
※撮影は道路交通法を遵守し、安全に配慮し、倫理観に則って行っています
こちらでは動画で紹介しています