初めて携帯電話を購入したのは平成6年5月のことだ。その4月から携帯電話の自由化みたいなことがいわれ、一般庶民でも何とか買える値段になった。携帯電話を買える場所は限られていて、都内では(もちろん、住んでいる地域によって異なるけれど)新宿のNSビルに入っていたドコモが一番近く、20万円握りしめて契約しに行った。また、周囲で携帯電話を使っているのはヤクザや得体の知れない人が多く(少なくともイメージではそうだった)、真面目な社会人としてはちょっと隠れて使うような感じだった。
それ以来、何台の携帯電話を使ってきたことか。実質0円などということもあり、最新機種が発表されると聞いて、販売初日の10時にドコモに行って契約したことが何度もある。新機能に興味があったし、軽くなったり薄くなったりする技術革新に関して自分の目や耳で体感したかった。そうやって何台もの携帯電話を使い、最近はスマートフォンで何もかもできるようなり、その恩恵を受けた生活を送っているわけだ。
昨年秋、それまで使っていたスマホの電池の持ちが悪くなった。2年近く使ったから当然だろう。しかし、電池交換にかかる費用は高額だから、機能的には何の不満もないけれどスマホを買い替えようと考えた。すると、2万円台のスマホがあった。電池容量もメモリもランクは下がるけれど、そもそも動画撮影をしたり音楽を聴いたりゲームをしたりといったことはあまりないので、ほとんど影響がないだろうと思った。寝転びながらニュースを見たり、軽くSNSをチェックしたりするくらいなのだ。もちろん、買う前に口コミも見た。
失敗だった。振り返ってみると、これまで右肩上がりでスペックを上げてきた。以前に使っていた携帯電話(スマホ)よりもハイスペックの携帯電話(スマホ)を買い続けてきた。それを初めてダウンさせた。納得できるはずだった。
致命的なのが、電池の持ち時間の短さ。購入前に電池容量を確認していたから理解していたはずなのだが、実際に使ってみると前機の2年使ったスマホと大して変わらないのだ。
さらに致命的なのが、たかがネットニュースを見ているだけなのに画面が固まること。あまりにも頻繁に固まるので攻略法を見出したほどだ。恐らく低メモリだからだろう。
もっと致命的なのが、とにかく動作が遅いこと。以前と同じように次々と操作をしようとしてもこちらの動きに機械がついてこれない。使うたびにイライラするのだ。
使い始めて半年ほどだが、今使っているスマホは入門機種という位置づけらしい。そうであれば納得できる。じーちゃんやばーちゃんはこれでいい。これでもスペック高過ぎだろう。
失敗の全原因は自分にある。高級店の寿司と回転寿司を比較するとか、レクサスと軽自動車を比較することがナンセンスであることは誰でもわかる。スマホも同じで、フルスペック機と入門機で機能やメモリが同じはずがない。そんなことはスペックと機種代金を見ただけでも理解できるはず。つまり、やっちまったのだ。
そういった意味でも、口コミをしっかり判断することは難しい。その評価が何を基準としているのか、人によって異なるからだ。例えば、カローラの口コミ。軽自動車から乗り換えた人と、クラウンから乗り換えた人では当然、評価が異なる。回転寿司の評価も同じで、築地の高級店の常連客と回転寿司の常連客では、評価が異なるのが当たり前だ。
四半世紀に渡ってドコモに貢献してきたというのに(w)、わざわざ自分でスペックを下げて不満たらたらで使い続けることの不条理さ。安物買いの銭失いとはまさにこのことだろう。いい勉強にはなったし、口コミの判断が難しいことも改めて認識した。
3月以降に行われる携帯電話会社の値下げ攻勢をよく分析し、今度こそ携帯電話会社選びもスマホ選びも失敗のないようにしたいものだ。(令和3年1月31日)