ラーメンを食べに行った。有名店ではない。都内某駅前にある昔でいうなら「どさん子」みたいな普通のラーメン屋である。未だに現金オンリーで、カウンターに座ると店員さんが注文を取りに来て、前金で払う。TVドラマの撮影がありましたという数年前の写真が黄色く変色しながら貼ったままになっている。ラーメンだけではなく定食もあるしビールも飲める。
1人でメシを食べる際、基本は外食である。打ち合わせであればファミレスは適しているが、1人の場合は勝手に敷居が高いと考えてしまう。であるから、行くのは1人でも気軽で気楽な定食屋、ラーメン屋、そして吉野家や松屋(松のや)、やよい軒や大戸屋といった店になる。
昨年来、世間では飲食店に対する不安感が増幅され、実際に営業時間の短縮や酒類の提供自粛などもあって、飲食店自体に行く機会が減った。特に1人で食事をするためだけの定食屋やラーメン屋などには全く行かなくなった。馴染みの店の前すら通らなくなった。
ラーメン屋の暖簾をくぐったのは2年ぶりくらい。扉は換気のために開けっ放しだったが、開閉時に鳴る鈴はそのままだったし、注文に来た店員さんは数年前からずっといる人のままだった。厨房1人給仕1人のシステムは変わっていない。調味料の入れ物もテーブル脇に置かれたティッシュも、そして注文した味噌ラーメンの味も麺の固さも変わっていない。客は相変わらず少なめで(行った時間はオフタイム)周囲に客がいないから快適である。
日本全国の緊急事態宣言が解除されたからラーメン屋に足を運んだと周囲からは見られるかもしないが、そこまでの考えはない。たまたま通りかかり、たまたま腹が減っていて、たまたまラーメンが食べたくなった。それだけだ。
ただ、そうはいっても深層心理では解除の影響はあるのだろう。8月のような感染者が増大している時期だったらラーメンなど我慢してさっさと家に帰り、カップラーメンでも食べていたことだろう。
先日、知り合いではないけれど、仕事の関係者で新型コロナウイルスに感染して亡くなった人がいる、と聞いた。60代以上というわけでもないのに無念だったことだろう。
そう、決して油断はできないのだ。そして決して油断はしていない。
久しぶりにラーメン屋で食べた味噌ラーメンは実に美味しかった。懐かしさもあったし、変わらぬ味とスープの温度に満足した。
街を歩くと、以前何度も行ったメシ屋が廃業していたり、全然違う店になっていたりする。寂しいことだ。そんな中でも頑張っている店は応援したい。もちろん、美味いメシを食べたい。
自粛明け、自分の判断で間違いのない生活をし、自己満足に過ぎないかもしれないが微力ながら経済を回し、自慢などしなくていいから少しでも普通の生活に戻れるようにしていきたい。(令和3年10月10日)